碧海の家

施主のMさんと初めてこの土地を訪れた時、この町に染みついた空気感が心地よくて、直感的にすごくいい!と思ったことを今でもしっかり覚えています。ここ高浜市は古くから三州瓦の産地として栄えていて、計画地はその中心地周辺に位置し、周りには今尚その名残りのある古き良き町並みが広がっています。町中を散策してみると、綺麗に整備された"鬼みち"と呼ばれる散策路があったり、道途中には三州瓦が上手に利用されたポケットパークがあったり、現代まで残る三州瓦の工房があったり、瓦屋根の家屋、トタン外壁のバラック的な家々、母屋と離れのある伝統的な日本家屋の形式が多く見られたり、その町並みに意識的に呼応した新しい家や改修された家が建っていたり、三州瓦の町としてのアイデンティティがあちらこちらで散見できました。
「碧海の家」は、この町のコンテクストを受け継いだ、新しくも以前からそこに佇んでいたかの様な家の立ち振る舞い方を考えました。分棟型にして建物のボリュームを低減したり、住居と道路の間は庭をつくり緩やかな距離感をつくることで近隣にも小さな憩いを提供したり、外壁にトタンを想起させるような小波板を使い、色は三州瓦に倣って燻銀にしたり、室内からは"庭→東屋→町並み"と風景が横断し、この町に住むことの喜びや居心地の良さをつくりあげています。
こんな町中でも新陳代謝はもちろん起きていて、残念なことにミニ開発され商品として建てられた家々がぽつぽつと現れはじめているのも現実です。家は個人のもの、されど、その町に住んでいくための責任もあります。この小さな住宅が、少しでもこの素敵な町並みに寄与してくれることを願っています。


 

 

 

 

 
  

 

 
  

 
  

 

 

 

 

 

 

 
  

 

 
  

 

 

 

 

 

 

 

所在地 |愛知県高浜市
主要用途|専用住宅
工事種別|新築
構造規模|木造2階建
家族構成|30代夫婦+子供2人
敷地面積|157.81 ㎡
建築面積|  57.36 ㎡
延床面積|108.53 ㎡

施工|feels
造園|野はらうた
写真|山内亮二